私は足取り重く屋上へ向かう。錆び付いたドアを開けると、そこには奥村くんがフェンスに手をついて、私に背を向ける形で立っていた。
「ごめん。呼び出したりして・・・」
私が来たことに気付いた奥村くんは、振り返り、申し訳なさそうに言った。
謝るくらいなら呼び出さないでよ、と思いながらも、そんなことは口に出すこともできず「いいよ」というと、奥村くんが口を開いた。
「俺、ずっと原田さんのことが好きだったんだ。もしよかったら、付き合って欲しい」
やっぱりか。
「ごめんなさい。今は、受験に集中したいから・・・」
彼氏もいないし、好きな人がいるとか言って、誰か聞かれても嫌だから・・・この答え。
「・・・そっかぁ。じゃぁ、受験が終わったら・・・考えてくれる?」
うわっ、しつこいし!
遠回しに断ってるのわかりませんか?
好きなら受験でも付き合うし!
「・・・考えておいてね」
奥村くんは言うだけ言って、去った。
何あの人。
「はぁ〜」
私がその場に立ち尽くして、ため息をついていると、建物の向こうの方から物音がし、私はすぐにそちらを向いた。
誰かいる?!
しばらくして、私の前に現れた人物に驚いた。
「ははは〜。盗み聞きするつもりはなかったんだけど・・・耳に入って来て・・・。ってか、原田、お前モテるんだな〜。お、奥村もいい奴なのになんで断ったんだ?彼氏でもいるのか〜?」
そこには紙袋を片手に持ち、反対の手は髪を触りながら、何かをごまかそうとして、やけに言葉数が多い先生がいた。
何?その言葉。
私、気持ちは伝えてないけど、先生の事が好きなんやで?
なのに、その言葉はきついわ・・・・・。
私は、先生の言葉に切り付けられるような思いで何も言えずに立ち尽くしていた。
「彼氏なんていないけど、好きな人がいるんで・・・」
ようやく出て来たのは、こんな言葉で・・・・・・私は先生の顔を見ずに、走って出て行った。
『好きな人がいる』
その好きな人はあなた。
それなのに・・・。
辛いよ・・・。
私は知らないうちに涙を流していた。
こんなにも、先生が私に占める割合が大きいなんて思わなかった。
家に着くと、制服を脱がずにベットに寝転がりまた泣いた。
先生から見たら、ただの生徒やけど・・・・。なんで・・・先生は先生なの?
私はどうしようもない壁にぶつかって、身動きが取れない状態になっていた。

