スタートライン~私と先生と彼~【完結】



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「今学期は、高校生活最後の文化祭、体育祭があるので、その時だけは受験を忘れて、楽しむようにな。受験には休息も大切だからな。明日の実力テストがあるから、遅刻しないようにな」


川田先生のホームルームが終り、私は夏休みの宿題を集めて職員室へ向かった。

職員室へ行く途中、後ろから話しかけてくる人物がいた。


「原田さん。重いやろ?」


確か、隣のクラスの奥村くん。


「半分持つよ」


断ろうとしたが、半ば無理に奪われた。


「ごめんね」


私が持たせたわけじゃないと思いながらも、謝っておいた。


「いいよ。俺が勝手にやったことやし」


爽やかな笑顔は、少し白々しく思えた。

奥村君って、学年一モテるって噂よね。

優しいんやけど、少々強引・・・。


「ありがとう」

「じゃあね」


奥村くんは、突然現れて用が済んだら去っていった。


なんやったんやろう・・・。

よくわからんし。


でも助かったからいいか。

「失礼します」


私は職員室のドアを開けると、真っ先に目に入ったのは、コーヒーを飲んでいる斎藤先生だった。

私は先生をあまり見ないように、川田先生の席まで向かった。


「川田先生、宿題集めて来たので置いておきますね」

「あぁ、ありがとう。重かったろ」


川田先生は、私一人で持ってきたことを気にかけてくれた。

もう一人のクラス委員の片山くんは別の教科を持って行ってくれてたことや、奥村くんが手伝ってくれたことを話した。


「失礼しました」


職員室を出るとき、斎藤先生と目が合い、軽く会釈をして出てきた。


目が合うだけで、まだドキドキする。先生のあの瞳で見られると、いつも一瞬時が止まったかのように、動けなくなってしまうのとは反対に、心臓はありえないくらいのスピードで鼓動し始める。


このドキドキはいつになったらなくなるのだろうか・・・。


きっと馴れることなんてないのかもしれないと、自己完結させて職員室をあとにした。