「斎藤先生、今いいですか?」
放課後で賑やかになっている職員室で、聞き覚えのある声だけがはっきりと聞こえた。
俺が聞きたかった声だ。
「どうした?」
『俺はいつでもOK』なんて思いながら、教師っぽい返事をする。
「この問題、教えて下さい」
原田でもわからない問題があるんだな・・・。
俺は原田の隣に立ち、彼女が持っている問題集に目をやった。
俺より15センチほど低い彼女の横顔をチラッと見るだけでドキドキしてきた。
さらに追い討ちを掛けるように、彼女のシャンプーの匂いが俺の心を刺激する。
問題は、やはり数学が得意とあって、少しヒントを与えたら、すぐに解く事ができた。
・・・というか、本当に解けなかったんだろうか?彼女なら、解けそうな問題だったけどな・・・。
「ありがとうございました」
笑顔で去ろうとした原田を呼び止めてしまった。
「原田!」
・・・まだ話したい。
そんな欲が出て来てしまい、呼び止めてしまった。
「はい」
不思議そうな顔で原田は振り返った。
まずい・・・呼び止める理由なんてない・・・。
「べ・・・勉強頑張ってるか?」
ゲッ、なんて平凡な質問なんだ。
しかも噛んでるし・・・。
しかし、原田の顔が予想外に曇った。えっ?俺、なんかまずいこと言った??
「どうした?なんかあったか?」
俺は、動揺を隠し切れないまま、原田の顔を覗き込むようにして聞いた。

