スタートライン~私と先生と彼~【完結】

俺は副担任だが、昼食は、3年8組の教室で食べるようにした。

生徒達と親交を深めたいのもあったが、同世代の人間がいない息苦しさから解放されたいという理由もあった。


俺の周りには暑苦しいくらいに男どもが寄ってくる。

ほとんどが、数学の質問だ。さすが受験生。

しかし、俺は食事の時はそれだけに集中しないと、作ってくれた人に失礼だと思うから、話す以外の『ながら食い』はしない。

「飯を食う時くらい勉強は忘れろ」

俺は、すぐに教科書や参考書を閉じさせる。


そうなると聞いてくるのは・・・・。

「先生って彼女いるの?」


またかよ。お前ら勉強と女のことしか考えることがないのか?

・・・・ないな。

俺も高校生の時は、あんな感じだったんだろうな・・・・。

でも、もう少し落ち着きはあったとは思う。


こうなると、数少ない女子生徒も参戦してくる。


「おもしろそうな話をしてるね〜」

そこには、原田もいる。


ここで正直に言っても問題ないが、彼女がいることを原田に知られたくないと思ってしまった俺は・・・・・・。


『いる』とも『いない』とも言わず、話を逸らす。


なんて意味のないことをしてるんだろう・・・俺は。


昼食を済ませると、生徒たちとくだらない話をして過ごしていた。


そうすることで、俺は生徒たちとの距離を縮めることができたのと同時に、自分もまた高校時代に戻ったような気分になることができるのを新鮮に感じていた。