スタートライン~私と先生と彼~【完結】

少しだけ仕事にも馴れてきた日の放課後、俺が職員室の自分の席で、次の日の授業の準備をしていた時に、川田先生に声を掛けられた。


「斎藤、馴れたか?来週から個人面談があるから、
進路希望に目を通しておくように。斎藤先生も一緒に様子を見てもらうから」


川田先生は、笑顔でそう言うと、ドサッと40人分の進路希望用紙の束を置いて立ち去った。

「はい、わかりました」


俺は、戸惑いながらも返事をし、目の前の束に目を通す。

『○○大学 理学部、

△△大学 理工学部、

××大学 工学部、

○○大学 医学部・・・・ 』

さすが理系クラスやな。

俺の目に付いたのは『京府大学 理工学部』


おっ、京府目指す奴がいるんやなと思いながら、名前に目をやると『原田沙知』と整った字で書かれていた。


・・・原田か。あいつなら・・・。


「おっ、原田はやっぱり京府目指してるんだな。あいつなら大丈夫かもな」


隣に座る高橋先生は、椅子を俺の方に寄せて、コーヒーを飲みながら言った。


「数学だけじゃなく、他の教科も優秀なんですか?」


俺は、疑問に思っていたことをそのまま質問した。

「斎藤先生の高校時代を思わせる成績だよ」


高橋先生は、自分の席に戻り、笑いながら去っていった・・・。

高校時代の俺の成績かぁ・・・。


俺は再び原田の文字を眺めながら、自分の高校時代を思い返していた。