『あ、ありがとう』
俺はちょっと恥ずかしくてクロの目を見ずに言った。
クロは楽しそうにまるでいたずらする前の子猫みたいな目で俺を見てきた。
「あれ?わんこ照れてるのー?」
にやにやしながら聞いてきた。
こいつ…腹立つなぁ…
『うるさい。』
ジロッと睨んでるのにクロには全く効果ないようだ。
2人で言い争いながら歩いていたら…
「すいませーんちょっといいですか?」
いきなり女の人に話かけられた。
ササッと俺の後ろに隠れるクロ。
ほんと人見知り激しいな…笑
「あの、怪しいものじゃないんです。私女性雑誌の編集者ものでして佐藤と言います。」
あーたしかに編集者っぽいな。
手入れされた髪にシンプルだけどどこかお洒落な服装。
ファッションに敏感そうだもんな。
「今雑誌の特集のイメージモデルを探していてその企画が"カップル"なんです。
是非お二人に出てもらいたいなと思ったのですが…」
"カップル"企画ね…
『あの〜俺たちカップルじゃないんですよ…』
俺が訂正すると女の人驚いたのか目を見開いて俺を見た。
「あ、そうなんですか!てっきり雰囲気で恋人同士と勘違いしてしまったんですけど、すいません!」
…やっぱ恋人同士に見えるのかな。
別にクロといると楽しい。他の女と2人で遊ぶよりは遥かに。
だからって好きなのか?
って聞かれたらわからない。
人間としては好きだ。

