俺はその動作をビクビクしながら見つめていた。
「あたしの名前まだ言ってなかったよね?」
そうだ、俺名前すら知らなかったんだ。
俺のことなんてフルネームで知ってるしつか学生証見られたからな。
「あたしの名前はクロカワ ユウナ。真っ黒の黒に水が流れる川に優しいって字に菜っ葉の菜で。黒川優菜ね。好きに呼んでいーよ。」
くろ…かわ?
『クロ。』
「…へ?」
俺がそう言うと間の抜けた声が聞こえてきた。
『黒猫っぽいと思ってたし"クロ"なんて猫っぽいからクロって呼ぶ。』
クロはぽかーんとしていたがすぐくすくすっと笑っていた。
なんかクロってあんま笑わないイメージだから珍しくて魅入ってしまう。
「そんなこと言ったら君は犬っぽいから"わんこ"ね。」
『へ?』
今度は俺が驚く番だった。
俺が犬っぽい?…初めて言われた。
「わかった?はい、わかったらわんこお手!!」
ちょっと違うだろ…と思いながらもおずおずと右手を出してしまった。
『…わん?』
「いーこいーこ」
そんなこんなでクロとの不思議な関係が始まったのだ。
『わん?』