私が人妻……
しっくりこなかった。記憶を失くしているせいなのかな?

「無理に思い出そうとしなくていいよ。ゆっくり思い出そう? 俺も協力するよ」

彼は私の肩に軽く手を置いて、優しい微笑みを口元に浮かべた。
戸惑っていると彼は私の手を握る。

「…妻とか言われても分からないよな。俺たちは、これから夫婦になるんだ」

「これから…?」

「そう。だから夏奈子さん、俺とまずは友達になって欲しい……ダメかな?」


私は彼の顔を見て小さく頷いた。
私達は結婚してなかったんだ。
やっぱり、初対面だったのね。でも、頭の片隅で思うのは初めて会った気がしないという思い……。

「ありがとう、夏奈子さん」