白いモヤのかかった天井……

何処からか聞こえてくる子供の声

少しだけ冷たい足元……



「夏奈子……夏奈子!!」



私の横で誰かが叫んでいる。誰を呼んで居るの? かなこ…?



「夏奈子、良かった。気が付いたのね、心配したんだから…っ!!」


白髪交じりで髪を肩まで伸ばした年配の女性が、白髪の男性に抱き締められて泣いている。それはとても奇妙だった。


「夏奈子……夏奈子……」



シワ一つない真っ白なシャツでネクタイを締めてない格好の男性は、私の手をしっかりと握り締めながら涙ぐんでいる。彼もまたとても奇妙だった……。


「夏奈子、体は痛くないか?」



私は戸惑いながらも頷く。
知らない人に囲まれているせいで、口の中がすごく渇いて上手く喋れない。


「……夏奈子?」


さっきから何度も出てくる名前

『かなこ』って……?


「おい……。俺が誰かわかるか?」


途端に険しい顔で男性が私を見つめる。その顔が怖くて私は顔を背けた。


「……私達が誰なのか、分かる?」

「お前、自分の名前が分かるか?」


病室にいる3人を私は見たことがない。だけど彼らは私を知っている?
それがとても奇妙で、とても恐い。


「まさか……そんな……嘘だろ。カナ、なぁ本当かよ…夏奈子……っ」


膝から崩れて泣き出す若い男性、そして驚いた顔で私を見る年配の男女……。