屋上の、誰もいないところに座りただただ空を眺める。
本当は、兄と食事をする約束をしていた。
でも、それは叶わなかった。

いや、叶えたくても叶えられなかったって言った方が正しいかな。

でも、独りで食べるお弁当も案外悪くない。
空が広くて青いせいかな。
それが、心の救いだからかな。

そんな気がした。





「あのー……津雲さん?津雲…光さん…ですよね…?洸先輩の…妹の…」



私の名前を呼ぶ、1つの声がした。
とても優しい声だった。
男の人だろうか、少し低くて安心する声。
兄の名前を呼ぶあたりからすると親しい人間なのだろう。
しかも、“先輩”と呼んでいるということは後輩なのだろう。
そんなことを考えながら、その声のする方を見た。


「…………はい。津雲…光…です…」

初めて見たその人の姿は、兄にそっくりで、でも何か違ってて、それでも兄みたいで…

「あの、俺2年の加藤悟っていいます。これからよろしくね?」


加藤悟と名乗るその人は兄とは程遠く、でも兄と近くて。
兄の存在には到底適わないのに、兄の存在を越える何かがあった。