「兄は何故亡くなったんですか」

『お嬢ちゃんは、知らなくていいよ』

「兄は何故亡くなったんですか」

[貴方が知る必要はないわ。ごめんなさいね]

「あの、兄は何故…」

〔教えられない。忙しいんだ、話しかけないでくれ〕



医者にも、看護師さんにも、兄の担任の先生にも、兄が死んだ原因を聞いた。
誰も教えてくれなかった。

どうして、誰も私に教えてくれないんだろう。
両親だって教えてくれない。
兄と私の間では秘密はなしなのに。

死んだ兄が残したものは、私に教えたくない“死んだ原因”だった。








(死んだ原因なんて今更どうでもいいじゃない)