兄が死んだ。







寒い冬はもう過ぎ去り、春がやってきた。
私は、春から高校生になる。
夢にまで見た高校生。
兄と同じ高校に通える事が何より嬉しくて、何より楽しみだった。
入学式当日も、兄は来なくていい筈なのに私の為に来てくれた。
兄は、優しくはない。真面目でもない。
だけど、私は大好きだった。
私の頼みを何でも聞いてくれた。
嫌々ながらも、私の頼みを聞いてくれた。

だから、大好きだった。
大好きだったのに。

入学式の当日の帰り、兄が死んだ。


両親の目は、既に死んでいた。