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遡(さかのぼ)ること、30分前。


先生の突然の思いつきで始まった席替えは、何のひねりもなくクジ引きによるものだった。


あたしの隣の席だった男は「反対!」と恥ずかしくなるような大声で叫んでいたけど、当然その声は却下された。


「はいはい。浅香くんは本当に藤堂さんのことが好きねー。次も隣になれたらいいわねー」


「すがすがしいほどの棒読み!」


ひとり浅香は憤慨していたけど、みんなくすくすと笑ってそんな浅香を見ていた。


……笑ってないで助けてよ、もう。


先生にまであんなこと言われて、恥ずかしいとも思わなくなった自分にショックだよ……。


「やっとあんたと離れられると思うと嬉しくて涙が止まらないわ」


「それ悲しくての間違いだろ」


「あー、そうですねー。すっごくかなしー」


「おまえ本当可愛くないよな」


はぁ、とため息交じりに言われて、カッと頭に血が上る。


そんな可愛くない女のことを、先生にまで知られるくらい追い回してんのはどこのどいつだっていうの。


……なんて。