ダンが立ち上がる。それから、私に向き直った。相変わらず全身からキラキラとオーラを出しながら、やつはコクンと頷く。

「・・・判った」

「それはどうも」

 ダンがするりと後ろを向いて窓に向かって歩き出す。そして、そのままですうーっと姿を消してしまった。

 私はそれをじっと見ていた。

 頭の中では、ダンの真面目な顔、拗ねた顔、照れてジタバタと転がる姿が浮かんでは消えていく。それから、いつものあの笑顔も。

 何となく、胸の中がチクチクした。

 だけど気のせいだ。

 気のせい。

 抱きしめてきたダンのあの強い腕も、今晩中に忘れられる。


 ・・・忘れてやる。

 絶対に。