一度深呼吸をして自分を落ち着けると、神様の繁殖形態という新たな興味を頭の中から追い出した。それから両手に腰をあててダンを見下ろす。

「とにかく、私はそんなことを言ってるんじゃないのよ。いい?あんたは観察対象の私に余計なことをベラベラと喋り、挙句にいきなり抱きしめておいて、素直になれなんて説教を垂れた」

「・・・」

「それは完全に余計なお世話だし、私はあんたにうっとりするどころか言われたい放題に悔しくて泣いたのよ」

「・・・」

 私はピシッとつきたてた人差し指を、顔の前で揺らした。

「あんたにとって私の人生が、惨め~で、切なく~て、ど~うしようもない、夢も希望もないようなモノに思えても、私自身はその人生をこよなく愛していて、満足しているのよ」

 ダンはショックを受けていた顔を真顔に戻した。

 私は幼子に言うように優しくて丁寧な態度で彼を覗き込む。

「だから、私の人生に対して、口を、だーさーなーいーで」

「・・・ムツミ」

「判った?」

 ダンがしゅっと目を細めた。唇を噛んで、しばらく無言で俯いている。

 私はダンを見ていた。

 八つ当たりだと言われ様が何をしようが、私は言いたいことをいったのだ。そしてそれは大事なことだった。少なくとも私には。