整ったダンの顔。その綺麗な眉が、すっと上がった。

「――――――人間は、子孫を残し、それを確実に育てるために結婚をするだろう。そのために愛という感情認識と性欲があるんだ。そう出来ている。ムツミには性欲がないのか?」

 おっとお!喧嘩を売られちゃったぜ。

 私はムスッとしたままで鼻を鳴らす。

「昔はあったけど今は枯れてるわね!」

「どうして」

「相手がいないからでしょうが!そう思うけど、実際のところは知らないわよ!」

 うがががが~!!何なのだ、人が折角気分よく電車に揺られているというのに!

 噛み付く私を無視して、ダンはその綺麗な顔に真剣な表情を浮かべてこう言う。

「つまり、好きな男がいないから性欲も沸かないし、結婚やその相手と共にいることにも魅力を感じないわけだな。ムツミが惚れる男がいればそれは問題ないわけだ」

「現代ではそれが最大の困難に特定されてるのよ!」

 大体元々惚れっぽい人がいればそうでない人もいるでしょうが!私は分類するとすれば、確実に後者のタイプだと思う。一目ぼれなんて信じてないし、この命を上げてもいいと思えるような大恋愛をしたことなどない。

 今目の前に完全に自分のタイプの外見をした男を用意されたとしても、その人の中身を知ろうと思って何かの行動を私が起こすとは思えない。そんなのきっと面倒くさいと思うだろう。そして私はその人を見て楽しみ、ああ、今日はラッキーだったな、好みの外見した男を見れたわ~などと思うに違いないのだ。