「カメが泣いたのは、俺が原因だって考える。それに最近色っぽくなったのも、俺のせいだって。本当は違ったとしてもそう考えるって決めた。だから、俺でお前の頭を一杯にしてフォローに代える」

 何なのよそれ。束の間呆れて、私は緊張を忘れる。さっきまで汗ばんでいた手のひらも、いつの間にかぐんにゃりとシーツに沈んでいた。体の奥底が熱くなっている。

「・・・シャワーは?私あんまり綺麗じゃないんだけど」

「んー、待つの嫌だな。それに俺が浴びてる間に逃げられそうで」

 また口付けながらそういう小暮に、残念ながら言い返せなかった。逃げる、かもね、そう自分でも思ってたからだった。

 フラフラな私は既に体からは力なんてなくなってしまっていたけれど、最後の抵抗を試みた。

「小暮・・・私、ほんと経験少ないから・・・その・・・」

 下手だと思うよ?それはさすがに恥かしくて言えなかった。

 だけど、薄明かりの中で小暮が笑ったのが判った。すでにその大きな手を動かしてシャツを脱ぎながら、彼は呟く。

「だいじょーぶ。俺だって、かなり久しぶりだし、それに酔っ払ってる。いいからもう、ごちゃごちゃ考えるな―――――――――――」

 ・・・はーい。



 世の中の、殆どのことに興味を失ってからはや3年半。

 何と私は、男に抱かれて夢の中へ入って行った。