カメカミ幸福論



 会社に行って――――――――ご飯を食べて――――――――美紀ちゃんや小暮と(多分)話して―――――――――帰って、それからご飯で・・・。

 一人で。

 電気を消した部屋の中で、私は天井にぽっかりと浮かぶ暗闇をみていた。

 この部屋に、あの輝きはいない。

 この部屋に、あの爽やかな香りはない。

「すごーく、気楽だわ」

 そう言ってみた。

 言葉に出してみれば、そんな気になると思ったのだ。

「すんごーく、気楽」

 そう、元々の生活を思い出すのよ、私。

 神様に観察されていた、そんなことは忘れてしまおう。だってダンは姿を見せないし。ってことは、何かやり方が変わったのかもしれないし。

 いずれにせよ、あの神は勝手に消えてしまったのだ。何も言わずに、あっさりと。

 いきなり降りてきて生活を掻き回し、そしてまた、いきなり居なくなった。

 だったら、私から忘れてやるんだわ。あんな腹立たしい男なんて。

 目を閉じて深呼吸をした。

 それからゆっくりと、眠りに落ちて行った。