カメカミ幸福論



 夕方になってもダンは消えたままだった。


 私は悩んだ末に簡単な夕食を一人分作って、頂きます、と手を合わせる。

 一人の時はこんなことしていなかったけれど、ダンと一緒に食べだすようになったここ数日で、食卓の挨拶も復活していたのだった。

 今は、一人だけど。

「・・・」

 夕食、いらないんだよね?一人だから黙々と食べる。よく考えたら今まで長い間そうだったはずだけど、今晩は、妙に暇だった。

 テレビも見ずに・・・一人で、ご飯。・・・あれ?私、今までどうしてたんだろう。一人暮らしの間、あまりテレビは見てなかった。飲み会も参加せずに、毎晩一人で食べていた。

 だけど・・・こんなに手持ち無沙汰な感じだった?

「・・・ダーン?」

 何となく、いつもの部屋もガランとして見える。

 私は呟くように神の名前を言って、部屋中をぐるりと見回した。

「・・・何よ。観察は終わることにしたの?それならそうと挨拶してから消えなさいよ。第一私、まだ記憶も消えてないわよ?」

 ヤツはとても普通だった。昨日の夜、ダンは私の隣でぐーぐー寝ていたのだ。それが朝になったら綺麗さっぱり消えていて、私の記憶はそのままで、ヤツだけがいないのだ。

 ・・・どういうこと?

 眉間にはくっきりと皺がよっていたと思う。私はそこからワケの判らない不機嫌に支配されて、味気ない晩ご飯を終わらせてからさっさと寝る支度をする。

 今日で休みは終わりだ。明日からは、またいつもの1週間。ベッドに横になってそれを考えた。