ここまでいったら、なぜ好きになったのかも知りたいよね!?


じゃあ、さっそく。聞いてくださいよ。



******************



それは5年前の冬の日のこと。


私の学校は毎年学芸会をやっており、


今年は劇をした。


私は、学芸会に使う大道具係だったので、


放課後に友達と一緒に大道具を作っていた。


(正直言ってやりたくなかったんだけどね。余ってたからしょうがなくやったのさ。)


しかし・・・


「ごめん。今から塾なんだ!」


「私も習い事あるの。」


なんかやかんやあって結局、暇な私はひとりぼっちになった。


最初はひとりでも黙々と作業を続けていた。


でもだんだん寂しくなってきて、しまいには私も帰るしたくをし始めていた。


そして作りかけの大道具を片づけようとしたそのときーーー



「あっ。」



そう、私はその大道具を落として踏んでしまったのだ。


そのせいで完成に近かった作りかけの大道具はぐちゃぐちゃ。


しかも、学芸会まであとわずか。


仕方なく私は、下校時間を過ぎても作り直していた。


それから多分2時間くらいはたっていただろう。


それでも進歩のない大道具に、


わたしは苛立ちと虚しさを覚えていた。


そしてついに。



「うぅっ・・・。」



私は泣いてしまったのだ。


やっぱり自分なんかががんばってもだめなんだ・・・。


こんなことになるんだったらやるんじゃなかったな。


そう思い、手を止めようとしたその瞬間、






「もう諦めちゃうの?僕も手伝うから、ね?一緒にがんばろうよ。」






顔を上げると目の前にはそれまで縁のなかった中宮しおんがいた。


そして私の手を握っていてくれた。


そのときの手の温もりは今でも忘れないほど暖かく、


病んでいた心を明るくするくらいすてきなものだった。