彼とほんとの私

智史は、私の顔を覗き込んでくる。


「そんなに近づかなくても話できるでしょ。あなたに会いに来たのは、優花さんの話をする為よ」


「えっ、なんで優花の話?それに、呼び方を智史からあなたに変えるなよ」


「そんなこと言ってると、優花さんに誤解されるわよ」


少しにらみつけて言うと、


「…誤解してるのは愛美の方じゃないのかな?」


智史は嬉しそうに言う。


「だって、優花さんはあなたの彼女なんでしょう?」


「違うよ」


「違うって、話が違う…」


「立ち話もなんだから、事務所に寄ってく?」


そう言うと、智史は私の前を歩いていく。


私も遅れないように智史に続く。


エレベーターで4階まで上がり、大柴法律事務所に着くと智史が扉を開けてくれた。


中に入ると、正面に優花がいるのを見つける。


「優花まだ仕事してたの?」


「智史こそ最近とくに仕事に熱心じゃない。そちらは、依頼人の方?」


「ああ、そんなところかな」


そう言って智史は親密そうに笑いかける。でも、優花さんが仕事ってどういうことなんだろう…。


「優花はここで弁護士秘書をしているんだ。ちなみに、俺の同い年の従姉妹だ」


「従姉妹?」


なんだ。従姉妹だったんだ。


優花は智史の彼女ではないんだ。私の勘違いだ。じゃあ、部屋を訪ねてきてたのは、仕事のことででやってきてた訳で、高校の時付き合ってるって言われてたのは、従姉妹だったから?