彼とほんとの私

私と結衣が、ひとしきり話していると、コンコンと部屋のドアが叩かれた。智史が食事の到着を知らせにきたのだ。ドアを開けると、


「2人で食べてもいいけど、せっかくだから、夕食一緒に食べない?」


と、智史が微笑みながら言う。


私は、あまり気が進まなかったから、断ろうとしたが、部屋の奥から結衣が、


「是非。ご一緒したいわ」


と言うので、しぶしぶ了解する。


「じゃ、後で来てね」


智史はそう言うと、私に視線を投げかけながらドアを閉めて行った。






2人でリビングへ行くと、智史と大柴は先に食べ始めていた。


「やっと来たね。こっちに来て乾杯しよう」


大柴が待ちかねたように言う。


結衣が智史の隣に座ったので、私は大柴の隣に座ることになる。


大柴がソムリエの様にワインの説明をしながら、ワインを注いでくれ、乾杯をする。私は、智史と目が合うと、うつむいて目をそらす。すると、智史は少し傷ついたような顔をする。


そんな私たちを見ていた大柴が、


「斉藤さん、何か悩み事でもあるの?疲れた顔をしてるね。そんなのじゃ、智史も心配するよ」


と、大柴が耳打ちしてきながら優しく微笑む。まるで、2人の事情を全て知っているかのように…。


その時ちょうど結衣が智史に、矢継ぎ早に質問をしていたので、智史は結衣の方を向いていた。


「えっ、何もないですよ」


動揺を悟られないように、手を左右に振り慌てて否定して、大柴の顔を見る。


「そんなことないでしょ。ほら、今も」


大柴の視線をたどると、私は智史の不機嫌そうな顔を見つける。