彼とほんとの私

智史のマンションへの帰り道、カップケーキのお店が見えた。お店に並び、マナーモードをOFFにする。


すると、智史から何件か電話がかかってきていた。


『マナーモードにしていたから、電話がかかってきたのに気づかなかったんだ。ちょうどいい。部屋を見てきたことを、智史に話そう』


お店を出た所で、智史に電話をかけてみる。


「もしもし」


名前で呼ぶのは恥ずかしいので、おもわず省略してしまう。


「誰?」


分からないのか、聞き返してくる。


「…斉藤愛実だけど」

「フルネームって、ありえなくない?愛実だけで分かるよ。ま、ディスプレイに表示されていたから最初から分かっていたけどね」


智史に電話するのは、これで2回目だ。からかわれたんだと知り、ムッとして単刀直入に言う。


「今日、部屋を見てきたの。良さそうなところで、そこに決めようと思うの」


決めるかどうかは、まだ決めていない。けど、勢いで言ってしまった。


「もう決めるの?早くない?」


智史の心配そうな声が続く。


「家で待っているから、帰っておいで」


そう言うと、電話は一方的に切れた。