彼とほんとの私

「近くに美味しいイタリアンレストランがあるんだ」


智史は、私の歩幅に合わせてゆっくり歩いてくれる。そして、当たり障りのない会話。時々、優しい微笑みをみせる。


以外と、気を遣ってくれるんだな。以前付き合った彼らは、こんなことしてくれなかったな。どっちかっていうと、俺について来いっていうタイプが多かった気がする。


智史も、初対面からキスしてくるから、そういうタイプかと思っていたけれども、どうやら違うらしい。


イタリアンレストランはレトロな感じで、そう広くはなさそうだった。中に入り、案内されたのは、一番奥の席だった。


向かい合って席に着くと、智史は当然のように言った。


「愛実は、好き嫌いない?ここは、バジルのスパゲティがおすすめだよ。もちろん、他のも美味しいけど」


「愛実って…」


「いいだろ、もうキスもした仲なんだし」


と、言ってにっこり笑う。


「っ、何言ってるのよ」


そこに、ボーイが注文をとりにきた。


智史は、もう一度聞いてくる。私はメニューを見てカルボナーラのコースを選んだ。


「ワインはいかがなさいますか?」


「赤ワインでお願いします」


「じゃ、僕も同じ物を」