見上げれば


今朝の電車は少し勇気が必要だった


別の電車すればいいのだけれど

あからさまに避けるのもどうかと思った。


普通に、普通に…


反対側のドア付近に立って景色をみていた

混んできたけど、変わらず窓の外をみていた

…少し頭がいたい。完全に寝不足だな…



「栞」

「…おはようございます」

チラッとだけ先輩をみて、また視線を外に向けた



「昨日は雨大丈夫だったか?」

「傘持ってましたから」

嘘。


何となく心配されたくなかった


「…なんで先に帰った?」

「用事がありました」


「何か聞きたいことあるんじゃないのか?」

「何もありません」


「栞、顔あげて」

「………」


ギュッとバッグを握りしめて見上げた

「…目が赤いな…」


先輩が私の頬を触るから
また泣きそうになる


普通なんて無理だ
自覚してしまったんだ


―お願い。期待させないで