身体をずらし両手をノブにかける。少しでも気を緩めたら落ちてしまうので、全体重をかけながら回していく。


『ギィィィィ………』


古びていたのかドアは鈍い音を立てて開く。ワタシは僅かな隙間に身体を入れ、なんとか屋上から出た。
目の前の階段でキミは毎日ここにきていた。ワタシに会うために…そう思うと一段下がることに込み上げてくるものが大きくなっていくのがわかった。


『コツッ………カツン……』


踏み外さない様慎重に降りていく。
キミの教室は四階の奥、今のワタシでは遠すぎる距離だ。
キミはどんな顔をするだろう。
ワタシもどんな顔をするのだろう。
分からない。
ただ今はキミの元へ行きたかった。





時間をかけて四階の踊場までやって来た。
ふと、廊下から話し声が聞こえた。
見ると、男子生徒2人の姿があった。
壁に体重をかけ進むワタシ。
でも、この人たちは気づいていないだろう。ワタシのことを……


「そういえば、屋上の幽霊の話知ってるか?」


その言葉と同時にワタシは立ち止まった。
話に耳を傾けたかった訳ではない。
目の前にいた……キミの姿を見つけたからだった。
キミは窓を開け黄昏ていた。
距離は教室1つ分、最後の力を振り絞る。
男子の話は尚も続く。


「屋上って、立ち入り禁止になってなかったか?」

「そう、その理由が幽霊が出るかららしいんだよ。昔、いじめを苦に自殺した女子高生が、出るって。」


もう少し、もう少しなのに……
限界まで動いた足は音もなく崩れ落ちる。
ガクンッと全体の力が抜け落ちる。
何とか動く頭をあげるとキミは男子の所にいた。
キミは聞いた。


「それって、ホントの話?」