さよなら、その先へ



「と、うご...くん?」


未だ透悟くんの胸に包まれながら呼んでみる。


しかしその力は緩まず、逆にもっときつく抱きしめられる。



「初めて、好きって言ってくれた」


そう、私の耳元で呟いた。



わたし。


透悟くんに好きって、言ってなかったの...?



思い返してみると、告白されたときは付き合ってって言われて、はいって言っただけだし、それからも恥ずかしくて言えてないかも。



「詩花、好きって言ってくれたことなかったから、本当に俺のこと好きなのかずっと不安だった。もしかしたら無理に付き合わせたんじゃないかって」



透悟くんの顔はまだ抱きしめられているせいで見えない。


けれども声が本当に不安気だったから、私はそれほど透悟くんを不安にさせていたんだろう。



「ごめんなさい。透悟くんのことは告白される前からずっと好きだった。今も好きだよ。でも私、緊張しちゃって何も言えなくて。本当にごめんなさい」




「俺もずっと詩花のこと好きだったから見てた。だから、詩花が口下手なこと知ってた。それでもなにか話そうと必死な詩花が健気でかわいかった。口下手な分、みんなが気づかない仕事を当たり前のようにやる詩花がすごくかっこよかった。だから、好きになった。俺こそごめんな。それくらいで勝手に不安になって。詩花のことわかってるつもりでわかってなかった」



透悟くんの口から聞く、真実。



知らなかった。


透悟くんがそんなに私を見てくれていたなんて。