『…乃、愛乃‼︎』

ぼやける視界。目をこすりながら顔を上げると、そこには要がいた。

「…どうしたの?」
あたしが眠そうにしてるのをみて、要は声を荒げて言った。
『どうもこうもねぇよ!いつまでたっても来ないから探しに来たんだろ‼︎』
「…え?」
最初、要の言っていることが全く理解できずにいたが、要の呆れた顔をみて思い出した。
…確か、放課後に物置部屋に行かなきゃいけなかった気が…
「…あぁっ‼︎‼︎」
『忘れてたのかよ!‼︎言い出したのはお前だろうが…ったく…はぁ。とにかく、ほら、はやく支度しろよな。行くぞ!』

✴︎

支度を終えて廊下を歩くと、異変に気がついた。
「ねぇ、要。先生とか、皆は…?」
…生徒も先生も全くと言っていい程いない。
総合高校なので生徒が部活だのなんだので溢れている筈だし、文化祭も近いので先生と10回以上すれ違ってもおかしくないのだが…
要は全く動じていない。聞こえてないのだろうか…
「要。先生とか皆、いなくない?」
『…今日は俺たち四人が臨時で呼ばれたんだろ?お前まだ、寝ぼけてんじゃん?』
寝ぼけてるなんて失礼な。そう思ったがまぁ要はいつもこんな調子だ。
「あ、そうだった…忘れてたわ。」

何だか、おかしい気もするが、妙に納得した。確かに臨時で呼ばれたのなら私たち以外にいる筈がない。携帯の日付をみても、今日は学校の記念日で部活も殆どOFFだ。
…そんなこんなで黙々と廊下を歩いていると、【いつもの場所】に着いた。
『あーーいーーのーー!!遅過ぎ
!!どうせまた屋上でお菓子食べてたんじゃないの?!』
この、騒がしい黒髪癖っ毛ロングのメガネは、「相田 水帆(アイダ ミズホ)」。あたしの、小学校からの親友で、いつも一緒にいる。凄く頭良さそうで大人しそうに見えるのが逆に、まぁあれで騒がしい。

『そうだったら良かったんだけどな。こいつ、教室で寝ていやがったよ。』
ニヤニヤと痛いとこをついてくる背高のっぽは、「五木 要(イツキ カナメ)」。こいつは、中学校の時に知り合って、仲良くなった。水帆と犬猿の仲で、口論が絶えないのをいつもとめている。あたしより10センチ以上高くて(とはいっても、あたしがちっちゃいだけだけど…)、背が高いから憎い。大事なことなのでもう一回言う。憎い。

『…えっ?!何それずるくない?私も寝たかった!!てかあんたもちょっと遅かったけどまさか一緒に寝てたんじゃ…』
水帆は要をマジマジとみている
『んなわけあるかよ‼︎屋上見に行ってたんだっつの‼︎』
相変わらず、要は水帆の冗談を間に受けてる様子だった。
『まぁまぁ、もう揃ったんだしさぁ
、そろそろ先生のとこ…』
…そう、ゆったりとした口調で話すのは、「荻野 裕也(オギノ ユウヤ)」。中学校の頃、一回同じクラスになったが委員会などで面会し塾も同じだった、というところであまり話したこともないしよくわからない。
「ごめんごめん、そうしよ…」

ーーーガシャンッ‼︎‼︎‼︎

あたしの言葉を遮り、1階からガラスの割れる音がした。