「はぁ…」


ため息をつくと、私は、右手に持った
生徒鞄に、再び目を向ける。


すると、隣を歩いている、
由香にパシン、と軽く肩を叩かれた。


「アンタ、何回目よ、そのため息。
 アタシまで憂鬱な気分に
 なるんだから、やめてよねー。

 悩みがあるなら、
 聞いてあげるけど?」


「別に悩みはないんだけどねー。
 …ちょっと、疲れてて」


あながち嘘でもない。


まぁ、本当でもないけど。


黄昏時、窓の外に見える、
夕日の沈んでいく様子を見て、
またため息を一つ、つく。


今日、何回目だろう。


十回はついた気がする。


つきすぎかなぁ、なんて思いながら、
廊下を由香と歩く。


悩みがあるのはあるけれど…。


由香に、いや、
他の人に話すような悩みじゃない。


鞄が普段より重く感じるのも、
その所為だ。


「ふーん…。でもアンタ、
 傍目から見れば、
 すごい悩んでるように見えるから」


え、そうかな!?


隠してるつもりなんだけど…。


…私の心の中は。


寂しさと悔しさと、
切なさでいっぱいなんだ。


明日が、先輩の、卒業式、なのに。