雪が降り積もる野原に、
一人の少女が立っている。


…と、その瞬間、雪が瞬く間に溶けて、
春の草原が姿を現した。


その草々は鮮やかな新緑色で、
辺りに少し苦い匂いが立ち込める。


少女が、足元に咲いた
一輪のたんぽぽを摘み取った。


その刹那、草原の遠い向こうから、
青い青い大波がやってきた。


すぐそこまで押し寄せた波の中に、
少女は飛び込んだ。


色とりどりの魚と戯れながら、
一輪のたんぽぽを放す事はない。


大きなクジラが現れ、
少女がその肌に触れた。


スゥ、と一瞬で波が引き、
少女を囲むように
幻想的な桜の木が生え、
美しい桜雪を降らせた。


その止む事のない桜雪は
積もり積もって、雪になった。


また、少女は雪野原に取り残された。


右手に、一輪のたんぽぽを持って。









病室に、寝たきりの少女が眠っている。


「ふぁ…」


少女が目を覚ました。


暖かい、いつも通りの
病室のベッドだった。


「…夢かあ」


少女は残念そうに辺りを見回した。


あんなに面白くて、綺麗だったのに。


少女の右手には、
たんぽぽが一輪、握られている。


            —完結—

これも、手が動くままに
書き綴っていった結果の物語です。

なぜ、たんぽぽは握られていた?

それは、ご想像にお任せします…。

趣味度…21%