蒼樹くんのその一声で周りからの視線が一斉にして私の方向に集中する

聖奈なんかずっと私をガン見してるし…

高校生活が終わりを告げるのは嫌だったから私も周りと同じように視線をうろつかせる


「君だよ、君」


今度は私に向かって指を突き出す

さっきまでは数人からしか視線は感じなかったのに今はみんながみんな私に視線を集中させている


「私…ですか? 」

「また会えて嬉しいよ、学校まで一緒なんてね。こんな偶然あるんだね」


最後にフッと微笑んだのが良かったのか周りの女の子達は黄色い声を上げている

それにしてもなんだか蒼樹くんの様子がおかしい

いつもこんなに優しい口調じゃないのに


とりあえずどうしたらいいのかわからなくて…

唯一頭に浮かんだ方法を試してみた


「あの…」

「何かな?」


爽やかに首をかしげる仕草が余計にカッコ良さをかりたたせる


「あはは…失礼しま〜す…」


愛想笑いをしてその場から立ち去るっていう方法しかバカな私の頭には浮かばなかった


ダッシュで走っている時,何か忘れているような気がしたけど早くあの場所から離れたくて何も考えないようにして教室に戻った


「はぁ…はぁ…やっと着いた」


息も絶え絶えなのに階段を全力で登ってきてしまったからもう歩けないくらいに足が震えている

廊下で息を整えるのもなんだか変だなって思って教室に入った


「疲れてるように見えるけどどうかした? 」

「友夏…ううん大丈夫」

「そう,ならよかった! …あれ? 聖奈一緒じゃないの? 」

「あっ‼︎ 」


何か忘れてると思ってたら聖奈置いてきちゃったっ

怒られるよな…どうしよう。


「ちょっと未來! 蒼樹くんとどういう関係っ⁉︎ 」

「ちょっ‼︎ あまり大きな声出さないでよ‼︎ 」

「私何も聞いてないんだけどっ‼︎ 」


興奮状態の聖奈に何を言っても無理で慌てて人気のないところに連れ出した


「で,どういう事? 」

「その前に…置いて行っちゃってごめん」

「はっ⁉︎ そんな事どうでもいいんだけど。それより早く! 」


急かされて蒼樹くんとテレビ局で偶然会った事,その後もメールでのやり取りが続いていた事を話した


「言ってくれればよかったのに〜」

「ごめんごめん」

「ところでさ未來先輩に目つけられたんじゃない? 今日の事で」