─────────────……
「そっかあ、夢空はもうクラスも家も変えられたんだね。…すごいなあ。」
「…琉空に背中を押してもらったからだよ。」
「うーん、俺は何もしてないけどね?」
悪戯っぽくそう言って、覗き込むように見てくる琉空から目を逸らす。
…私の力、みたいな言い方やめてほしい。
…自惚れてしまいそうだから。
「…ねえ、夢空。絵は、…どうするの?」
「…ああ、あれね。もう修復は出来ないから、…描き直すよ。」
放課後の美術室。
窓際で、柔らかな光を浴びながら私の方に振り向いた琉空に息を呑んだ。
…本当、綺麗な顔をしている。
誰よりも私の絵を楽しみにしていてくれたからか、私の言葉を聞いて切なそうな表情をしてるから余計に儚くて。
まるで、手を伸ばしても幻のように触れることは出来なさそう。
「残念、あの絵も楽しみにしてたのに。」
「…でも、改めて昨日見たらあの絵あんまり満足してないんだ。なんか、…綺麗な色で塗りすぎてた。」
琉空が不思議そうな顔で見てくるから、ふふ、と笑う。
…うん、あの絵は現実にない綺麗な色ばっかりで塗りすぎたんだ。
だから、私の理想だけを押し付けているような絵になって、…何もかもが薄かった。
「綺麗な色も、もちろん必要だけど、きっとそれだけじゃないから。…もっと色んな色で溢れて良かったんだよ。濁っている色も、暗い色も。それが全部1つの描いた絵になるから。…単体じゃダメでも、その色も良い絵を作るためには必要だから。」
「そう、…また描き直した絵、見せてくれる?」
「うん、琉空になら見てほしい。」
ぱぁぁ、と目を輝かせて琉空に、声を出して笑う。
…さすがに顔に出すぎでしょ。


