「ずっと怯えながら嫌われないように過ごして、自分らしさなんて捨てるのがそんなに偉いの?誰かを見捨てて自分じゃなくて良かったって安心する日々で満足なの!?」
琉空の言う通り、確かに私たちはまだまだ子供なんだ。
大人になっているつもりでも、間違いばっかりだから。
だったらみっともなくてもいい。惨めでもいいから。
やり直そう。間違いを、認めて。また前に進もう。
「…私は、そんなの嫌だ。ただの先生たちが決めたクラスだし、卒業まで1年だったとしても、何もかもを押し殺して何1つ大切なものが見つけられない日々なんて嫌だ。…みんなは、そうじゃないの?」
「…………。」
誰も何も話さなくて、重苦しい空気が続く。
……でも、このクラスを変えられるって信じたいって気持ちはきっと必ずしもみんな持っているでしょう?
「……何語ってんの?そんなの語ったところで誰にも届かないよ。」
沈黙を破ったのは、理緒。
言葉を失っていたみたいだけどやっと冷静を取り戻して、私を嘲笑う。
……違う、届くよ。何より強く願っているから。
薄い希望なんかじゃ、ない。
「……私には、届いた。夢空ちゃんの、言う通りだよ。…嫌われるのに怯えて自分を見失いたくない。そんな日々、望んでなんか、ないもの。」
緊迫した空気にスッと馴染むように澄んだ、まだ聞き慣れない声が通る。
…渚沙の声だ。
私を強く見て、射抜くくらいの視線に私の口元も緩む。
「…私は夢空ちゃんの方が正しいと思う。…理緒ちゃんのは、ただのいじめだよ、こんなの間違っている。」
私の隣にゆっくりと歩いてきた渚沙を見ると、可愛い顔で笑ってくれたから、私も自然に笑い返す。
目の前の理緒は、憤りを隠せていないみたいで、肩を震わせていた。


