「お、お母さん…?」
目に入った光景に驚いた。
走り回っていたのか肩で息をしていて、少し憔悴している顔のお母さんがいたから。
…それに、何よりもお母さんの瞳に、私が、…映ってる。
「夢空!!どこに行ってたの!?結衣と私で探し回っちゃったじゃない!」
すぐに飛んできた叱責に肩を竦めるけど、それでもいつもと違って受け取ったのは私を心配していた、なんて意味が込められている気がしたから。
…お母さん、私を心配して、くれたの?
私がいなくなって嬉しい、とか思わなかったの?
「ずっとずっと、探してたんだから。」
はあ、と息を整えているお母さんの台詞にまた目を見開いた。
…私が出て行ってからずっと探してたの?
結構長い時間が経ってしまっていたけれど、その間ずっと?
ねえ、お母さん。私のこと、なんで探してくれたの?
「…なんで、そこまでして、…私を探して、くれたの…?」
無意識のうちに震えていた声でお母さんに問いかけると、眉を下げたお母さんが私を見る。
「なんでって、私の娘でしょ…っ、娘がいなくなって、探さない親がどこにいるの。」
その言葉に今度は唇まで震えだした。
……お母さんにとって、私は娘として認めてくれてるの?
"私の娘"なんて初めて聞いたよ、ねえ、それだけですごくすごく泣いてしまいそう。
その言葉、嘘、じゃない?
「ごめんね、夢空…っ、ごめんね、…。今まで、夢空のことちゃんと見てあげられなくて、ごめんねっ。夢空のこと大切に思っていたのに、冷たい態度ばっかりとっちゃってごめんね…、ダメな母親でごめんねっ…。」
答えられない私に近づいて、そっとお母さんの腕の中へ包まれた。
あまり背丈が変わらなくなってしまったお母さんの腕が背中に回って、右手で頭を撫でて抱きしめられる。
お母さんの体温が伝わって、さっき止まったはずの涙腺が緩み出す。
…久しぶりに触れたお母さんの体温は、温かくて。
こんなにも優しい。


