「いいよ、聞いてあげる。」









ただのどうでもいい話。








私の主観ばかりで悲劇のヒロインぶっているただのくだらない話。










それでも琉空なら、微笑んで聞いてくれると思った。









それに、琉空になら聞いてほしい、なんてね。









「…私の家ね、お父さんが今単身赴任でお母さんと妹の結衣と私の3人暮らしなんだけど、親は昔からずっと結衣しか可愛がらないの。…私の存在なんてどこにもなくてお母さんは私のことこれっぽっちも見てくれない。」








ココアが入っているマグカップを両手で持ちながら息を吹きかけるたびに揺れる水面を見る。








波紋がただただ広がる様子を見つめて、話し続ける。








「お母さんは、結衣にはいつも楽しそうに笑うのに、私には一回も笑いかけてくれたことがなくて。私がどんなに頑張ってもそんなの興味すらなくて、ただ冷めた瞳を向けるだけだった。」








「夢空が、自分を失敗作だって言ったのはそのせい…?」










琉空の言葉に、ふと出会った日のことを思い出す。









そういえば私初対面にも関わらず変なこと言っちゃったもんな…。










本当に覚えていたんだ…。











「…うん、お母さん達にとって私は失敗作。失敗作には少しも愛情なんて与えずに、期待のある可愛い妹を愛したの。…そんなの、当然の結果でしょ。」









失敗作には期待も希望もない。








だったら結衣を大切に大切に育てた方がずっと頭が良い決断だ。









「誰にも愛されなかったの。今まで、ずっと、誰にも必要となんてされてなかった。友達も心から信頼できる人なんていなくって、私は上手い笑い方も愛し方も生き方もわかんなくて。」










どんどん誤魔化して笑うことだけが上手くなって、それに比例するように自分が嫌になった。









私が悪いっていうのはわかっていても、結衣しか愛さないお母さんに胸がズタズタに傷ついて、そんな毎日。