「あ、夢空。どう?少しは乾いた?」
「大分。貸してくれてありがとう。」
「ううん、あ、ここ座って。」
琉空がいきなり立ち上がって今まで座っていたソファーを指差す。
「え、琉空はどうするの?」
「ん?俺は床で大丈夫。夢空は女の子だし、ただでさえ濡れて体冷えてるんだから。」
笑いながらも目は真剣な琉空を見て、逆らえない何かを感じる。
さっきから琉空は意外と決めたことは貫くタイプだってわかりはじめたし、ここはお言葉に甘えよう。
遠慮気味に座ると、満足そうに顔を綻ばせた。
「夢空、なんか飲む?体温めた方がいいでしょ?ココアとお茶しかないんだけどどっちがいい?」
「…、そんなに気遣わなくて大丈夫だよ、って選択肢は?」
「ない。」
即答した琉空に若干降参するつもりで、「…ココア」と小さく呟くと、「りょうかい。」なんて楽しそうな声が聞こえる。
そのまま冷蔵庫まで行って、ココアを準備してくれる琉空を横目に、リビングを見渡す。
なんか、生活感がないっていうか、綺麗に片付いているなあ…。
「琉空は綺麗好きなの?」
「んー、それほどでもないよ、片付けは好きだけど綺麗好きってほどでもないかな。」
「ふーん…、やっぱり片付けが好きだと、こんなに綺麗なリビングが保てるのか。」
私の家も散らかっているわけではないと思うけれど、琉空の家の方がずっとキレイに片付いていると思う。
「まあ物が少ないからね。」
琉空の言葉に納得して、差し出してくれたココアを貰う。
「…ありがとう。」
微笑んだ琉空も自分のココアを口につけて、私の斜め前の床に座った。
目の前には透明のテーブルがあって、その奥に真っ黒なテレビが私の姿を映し出す。
「…ねえ、琉空。」
「なに?」
「…私の、どっちでもいい話、聞いてくれる?」


