「…うんと、あ、ドライヤーなら使える…かな、洗面所案内するよ。」
「ごめん、ありがとう。」
考えるような仕草をした琉空にお礼を言って、洗面所に案内してもらう。
引き出しから取り出してくれたドライヤーを受け取った。
「俺、リビングにいるからある程度乾いたらでいいから、来てね。」
うん、と頷くと、琉空が軽く微笑んでリビングに行ったのを確認してドライヤーのコードをコンセントに差し込む。
ブオオ…という音と共に流れてきた温風を髪に当てながら、手ぐしでとかすようにして乾かす。
鎖骨につくかつかないかくらいの髪の長さだけれど、濡れたことで少しだけ伸びたみたいだなあ…。
黒髪のストレートが雨水のおかげで、より真っ直ぐな毛になっていた。
目の前の鏡を見つめると、無表情の私が映る。
「……私、何やってんだろう。」
家を飛び出したわりに、琉空にまで気遣わせちゃって。
それなのに、こんな酷い顔、しているなんて。
髪に温風をかけた後、軽く制服にもドライヤーをかけると案外いい感じに乾いた。
冬服で結構厚めだから、あんまり中にまで水が浸透してなかったっていうのが大きい、かな。
髪を触ると、いつもよりはさすがにパサパサしているけれど、ある程度水気がなくなっていたから、もういいだろう。
カチ、と電源を止めてさっき琉空がドライヤーを取り出した引き出しにコードを綺麗に巻いてからしまう。
えっと…、リビングに行けばいいんだよね?
洗面所から出て、唯一電気が点いていた部屋に入ると、琉空がいて安堵する。
部屋間違えなくて良かった…。


