「…夢空、家に、帰れる?」
「………。」
琉空が優しく問いかけてくれた質問に、唇を噛み締めてゆるゆると、首を横に振る。
きっとお母さんは面倒なことが起きた、くらいにしか思ってないと思うけれど、それでも今は顔を合わせられるわけがなかった。
…家に、帰れるほど、心の整理だってついてない。
困ったように眉を下げた琉空が涙で滲んだ視界の中に映る。
…やっぱり、わがまま、だよね。
「…そのままじゃ、絶対風邪引くし、ここから近いから、…俺の家、来る?」
大丈夫、って言おうとした時に琉空が出してきた提案に、驚く。
「…い、いいの…?」
「大丈夫だよ、夢空が良ければで、構わないけど。」
自分で涙をぐいっと拭ってみるけど、一向に止まる気配はない。
こんな顔でびしょ濡れの体で行く場所なんてどこにもないし…。
微笑む琉空に、「お願いします」とだけ伝えて、そっと頷いた。


