静かに瞼を開くと、私の顔を微かに覗き込みながら黒い傘を傾ける琉空の姿が見える。
「…琉空…っ」
「髪も制服も、びしょ濡れだよ。…夢空が風邪引いちゃう。」
心配そうな表情でそう言って、傘の柄を持っていない方の手で私の手を掴むと、ベンチから立たせてくれた。
…なんで、琉空がここに…?
「…コンビニ、すぐそこにあるでしょ?夕食買おうと思ってこの公園通ったら夢空が見えたから。」
私の考えを見透かしたように、微笑む琉空に俯く。
雨の中、1人で傘も差さずにいたら、不審、だよね…。
帰れ、って言われるかな。
「夢空の家はこの近く?」
「…うん、どっちかって言ったら近いかも。」
「ふうん、俺の家もこの近く。」
学区内だからそれもそうだよね、って笑う琉空に、
溜め込んできた涙が、髪から流れる雨の雫と一緒に頬に零れた。
どんなに辛くても、悲しくても、これっぽっちも泣けなかったのに、
お母さんと言い合っても、一筋しか零れなかった涙。
それなのに、どうして琉空といると、こんなに涙がボロボロ溢れてしまうんだろう。


