走って、走って、苦しくて、咳が止まらない。
時々、水たまりに足が突っ込んで、靴下までびしょ濡れになった。
それでも、走り続けた。
脳裏によぎるのは、何も言わなかったお母さんの顔と、傷だらけの絵。
お母さんが私と結衣の扱いをどんなに変えても、私は黙ってそれに従うしかしてこなかったんだ。
……言ってはいけないことだってわかっていたから。
それなのに、言ってしまった。
そんな私の言葉に何も言わなかったお母さんに、余計に胸が張り裂けそうだった。
黙らないでよ…、肯定としか受け取れないじゃんっ…。
感情がごちゃ混ぜになって、体力がなくなったのとは別に心臓が苦しい。
わかっていた、何もかも。
私が描いている絵なんてただの夢物語。
それが切り刻まれた今、そんなの現実になんてないと否定されたのと同じ。
…私の存在、何もかもが意味のないものだったなんて、
全部、わかっていたよ。


