「部活休むなんて言ってなかったわよね?絵だけは続けてると思ったのに…、どうしてそう何でもすぐに逃げるの?」









逃げる…?私が?








お母さんの言葉に、引っかかって、顔を上げる。










「何でも見て見ぬフリをして、何もかも夢空は本当のものを見えてないじゃない。」










やれやれ、とため息をついて呆れたように言うお母さんに、今までどんなに悲しくても流れなかった涙が一筋頬を伝って、唇が震えた。











「…何も見えてないのはっ…お母さんの方じゃないっ…!」










「…は、はぁ!?何言って…!?」











「…いつもいつも結衣のことばっかりで何1つ私のことなんて見てくれてないじゃない!!私が最近ずっとどんな顔してたか、どんな気持ちだったかお母さんはわかんないでしょう!?だって、いつでも、ずっと私のことを見て見ぬフリして目を逸らしてきたから!!」










今までずっと言えなかった、気持ちが、不安が、溢れて止まらなくなる。










流れた涙は一雫だったのに、きっと私はすごく泣きそうで、苦しい表情をしてしまっているに違いない。









…知っていた、私がどんなに頑張ってもお母さんの中の私の存在がないに等しいことくらい。









私達の名前が、その象徴だ。









それでも認めてもらいたかった。









小さい頃から勉強だって頑張って、学年順位が一桁から落ちたことはないし、生活態度も至って真面目だったはず。









お母さんに、褒めてもらいたくて。結衣だけじゃなくて、私にも笑って欲しくて。










「…何でお母さんは結衣しか愛してくれないのっ…!?そんなに私はお母さんにとって邪魔な存在なの…!?そんなに要らないの…っ!?だったら、どうして…、どうして私なんて生んだの!!?」







「…っ、待って、夢空!!」







叫ぶようにそう言って、さっきまで言葉をなくしたように唖然としていたお母さんの制止も聞かずに家から走って飛び出した。









外はいつの間にか空が大泣きしているかのように、土砂降りで、私の服装も制服だったけれどそんなこと構わずに走る。