思わず絵と持ってきた鞄を抱えたまま美術室を飛び出した。
ここにとにかく、いたくなくて。
泣いている暇なんてなかった。
無我夢中で、苦しいのなんて構わなくて、学校からも全力疾走で逃げた。
「どうして」とかそんな疑問すらも思い浮かばなくて、ただひたすらに帰りたくもない家に向けて走り続ける。
意外と近かった家の扉を開けて飛び込むように部屋へ直行した。
部屋へ入った途端、鞄を放り投げて、抱えていた絵を見る。
「あ、はは…なんだ、っこれ…」
姿を変えた絵に乾いた笑いしか込み上げて来ない。
あちこちが切り刻まれて、向日葵が描かれていた部分はもはや穴のようになってしまっている。
空は切り刻まれた反動で色が濁って、お世辞にも綺麗な色、なんて言えるはずがない。
「はぁ…ほんっとうに…、なんなんだろう、これ…」
…頑張った絵。大好きだったから。どんな世界でも描けるから。
でも、所詮私の絵なんてこんなものだ。
私は、綺麗な世界すら、描けない。
………私は、こんな世界でしか過ごせない。