準備室に入った瞬間、目の前の光景に言葉を失う。









いつの間にか手の力が抜けていたのか手に持っていた絵の具が落ちたみたいで、ドサッという音がどこか遠くで聞こえた気がした。









「……な、に、…これ……」









頭の中が真っ白になって、とりあえずキャンバスに駆け寄って持ち上げる。








今まで描いていたキャンバスは無残なくらいに切り刻まれていて、イーゼルも故意的としか言えないほどバラバラに壊されていた。







…昨日まで、完成間近だった花。









太陽を必死で追いかけて、いつも凜としている黄色の宝石。










…そんな人になりたかった。









光に向かって何よりも立派に立つ向日葵に。








その向日葵が跡形もないくらいボロボロにされて、修復は明らかに不可能。









……な、なんで…、こんなに…っ。








頭に浮かぶのは、私なんかの絵を楽しみにしてくれていた、…琉空の笑顔だけで。








…ないよ、琉空がきっと好きになるって言っていた絵なんて、どこにも。









その時、床によく見るブレスレットが転がっているのが見えた。









「…これ、理緒のだ…」








こんなの見つけなくても、こんな荒らし方するなんて1人しかいない。









理緒の「ざまあみろ」って声が聞こえる気がして、…足が準備室から逃げるように動く。