私の姿を見て、理緒が楽しそうに笑ったのを感じた。









「助けた渚沙はあんな端っこで小さくなっているだけだし、仲が良かった夏芽と彩にはああ言われるし、可哀想だよねー?」








「……。」








「ああ、そういえばあんた、妹もいたっけ?肺炎で今は休んでるらしいけど姉は夢空なのに妹は結衣って名前だよね?あんた、親にも贔屓とか受けてんの?」







…は?







理緒の言葉にいきなり目の前が真っ暗になった。








………もう、それ以上何も言わないで。









結衣のこともお母さんのことも、こんなところで、言わないで。









理緒が、中1にいる私の妹に気付いて、夢空と結衣って名前を聞いて私を傷つけるためにテキトーに言っていることなんてわかるのに。








いくらでも、嘘をつけるのに。








喉がくっついて何も声が出せない。







口の中が乾ききっている。







だって、そんなの、真実…じゃん。










「理緒、それはいくらなんでも…」







「うっさいなぁ!!口答えすんの!?」








さすがにやばいと思ったらしく、理緒軍団の1人が控えめに声をかけると大声を出されて、その子がビクッと体を揺らした。








その途端に、理緒が面白くなさそうな顔をする。










「あー、もうシラけた!やってらんない!」










ドカ、っと足を組んで自分の席に座ると、ひと段落したのを察したクラス全体が明るくなる。










予鈴が鳴ったのもあって、みんながいつも通り普通に動き始める。








怯えるように私の前に彩が座ったのも視界の隅に入ったけれど、顔を一切上げられなかった。









……なんで、クラスのみんなの前で、あんなこと言うの。










なんで今。









みんながさっきのことを聞いてどう思ったかわからなくて、それが怖かった。










なんて考えているうちにいつの間にか、本鈴が鳴って先生が入ってきたけれどそんなのどうでもよくて。











……私は、どうしたらいいの?










1日の始まりに、そんなことしか思い浮かばなかった。