「ただいま…」
ゴミ箱に捨てられていた教科書のせいだけじゃない重い鞄を持って、家の扉を開く。
とぼとぼとリビングへ入ると、お母さんが冷たい視線をチラッと一瞬だけ向けてまるで誰もいなかったかのように私を視界から追い出した。
……、家でさえ私はこの世界にいない存在なのか。
鼻で笑いそうになったのを堪えて、無言の中、ご飯を食べようとキッチンへ向かう。
料理は作ってあるけれど、もちろん私の分をよそってくれるわけがなくて、いつも自分で準備して別々に食べる。
普段は結衣がいるから、もう少し家の中も華やかな雰囲気になるんだけど、今はそんなことになるわけになくて。
逆に重苦しくて息が詰まりそうな空気が増すだけだ。
「…いただきます。」
そういえば、この前結衣は1週間くらいで退院するって言ってたからそろそろ帰ってくる、かな。
そんなことを考えながら黙々とご飯を口に運んだ。


