ただ、そんなことを考えて、1人立ち尽くす。
「あー、なんか夢空ちゃんこれ以上やったら泣いちゃいそうだから今日は許してあげるね?」
理緒がなんか言っているけど、頭に上手く入らなくて口を開けなかった。
そんな私の姿に満足したのか、勝ち誇った笑みを浮かべて教室からいなくなった理緒。
その瞬間、雰囲気がさっきよりもふわっとゆるくなってみんながいつも通りに動き出す。
…今まで、渚沙はずっとこんな気持ちだったんだ。
傷つけられた割に、理緒がいなくなった途端みんなは普通の顔で過ごして。
自分だけが取り残される感覚。
倒れた机を直そうともせずにしていると、誰かが手を伸ばして起こしてくれた。
「あ、ありがとう…」
「…夢空が余計なことするからこうなったんだから。」
お礼を言おうとして顔を上げると目の前にいた夏芽が見たことないくらいの無表情でそう呟く。
「…巻きこもうと思ったわけじゃない。」
「それでも、必然的に巻き込んでるじゃん。大人しくしてれば良かったんだよ、理緒がいる限りこのクラスが変わるわけがないじゃない。」
面倒くさそうに息を吐いた夏芽に、無意識に握っていた拳に気付く。
…違う、変わる。変えたいとさえ思えば、何だって変わるはずだ。
「変わんないって諦めるんじゃなくて、変わるって信じて動いた方が絶対にいい。」
「でも、今何も変わってないでしょう!?」
初めて聞いた夏芽の大声に、クラスのみんなまで何事かと思ったのか視線を感じる。
それでも、夏芽の視界に入っているのは、私だけだ。
苦しそうな辛そうな顔をされるから、何も言えなくなって言葉に詰まってしまう。
「夢空はどうして自分を大切にしないの!?そんな薄い希望なんかで何で変えられると思うの!?私達だって、変えたくないわけじゃないよ、でも…っ、変えられないんだから仕方ないじゃないっ!!」
夏芽が泣いてしまいそうだった。
私よりも、ずっと。
違うって言いたいのに、言えなくて。
…だって夏芽が言っていることは紛れもない今の"現実"だ。
どうして。
どうして、"仕方ない"って私達は全てを諦めてしまうんだろう。


