「ねえ、彩。夢空のこと、どう思う?」
「えっ、ど、どうって…。」
理緒が狙いを付けたのは、彩。
私と以前仲良かったんだから私への攻撃には確かに最適。
きっと空気を人一倍読む夏芽は、彩みたいに戸惑ったりせずに理緒が望む答えを導き出すんだろうな。
ぼんやりそう思いながら突然の事に慌てている彩を見ると目が合ってしまった。
……いいよ、無理しなくて。理緒を敵にまわしたくない、でしょ?
「夢空のこと、好きで仲良くしてたんじゃないよね?」
答えない彩に近づきながら笑顔で問いかける理緒に夏芽が顔を引き攣らせた。
ここまで彩を追いつめると思ってなかったのかな。
「彩、答えは1つでしょ?何困ってんの?」
「……わ、私は夏芽と仲良かっただけだから!夢空とはこれっぽっちも仲良くなかった!私とは一切関係ないから!!」
彩が必死に目を瞑って出した答えは"私への拒絶"。
そうだね、きっと理緒が中心のこのクラスではそれが"正解"の答えだ。
彩がその答えを出したところで私が傷つく必要も、悲しむ必要も少しも、ない。
「だって、どんまいだね?夢空?」
ニコニコと振り返った理緒の声を遮りたかった。
でも、それが出来ずに、俯いて、強く強く、唇を噛み締めた。
何も、溢れないように。何も、零れないように。
胸の切られたような痛みも無視して。
無意識のうちに期待するなんて、本当私もバカだなぁ…。
そんな希望はすぐさまねじ伏せられたけど。
……私の抵抗の色は、どうしてこんなにも早く上塗りをされてしまうんだろう。
そんなに私の声は価値がない?


