「来ちゃった。」
音の方向へ向けた視線の先に、へへ、と笑う琉空が見える。
その瞬間、今までずっと張っていた緊張がすうっと抜けていく感覚。
「…琉空、久しぶり。」
「え、一昨日ぶりだよね?夢空の中じゃあ久しぶりなの?」
「ここ2日で色々ありすぎて。」
私がそう言うと楽しそうに、"そうなんだ"って笑う琉空。
その姿に脱力していた手を構えている状態から下ろす。
「なんでそんなに楽しそうなの?」
「夢空に会えたのが嬉しくて。昨日初登校日でドタバタしてて来れなかったし。」
サラッとそんなことを言う琉空に若干呆れながらも少しむず痒い気持ちになって、目を逸らす。
なんで琉空は毎回そういうことを言うんだろう…!
からかわれているのかと思っても、琉空がすごくまっすぐな瞳で言ってくるから、
どうしてもそのまま流せるわけ、ない。
「あ、絵、結構進んでる。惜しい、昨日もやっぱ来たかったなあ。」
当の本人はふわっと笑いながらそう言って、この前と同じ私の斜め前の椅子に座る。
それを確認して、邪念を振り払うように絵を描くのを再開しようとキャンバスに向き直った。


