「…ねえ、渚沙。あんた命拾いして良かったわねー?でも夢空に手を貸したらどうなるかくらいわかるでしょ?」
本を読みながら、嫌でも聞こえる理緒の甘ったるい口調に耳を塞ぎたくなる。
チラッとそっちに視線を送れば、ニヤニヤしている理緒と小さくなっている渚沙が見えた。
…わざとらしい。またいじめられたくなかったら大人しくしてろってことか。
いじめは止めたけど、渚沙が私の味方ってわけじゃないからそんなの別にいらないのに。
はあ、とため息をついて違う方向へ考えを変える。
…そういえば昨日琉空とは会わなかったけど、初登校日だから忙しかったのかな。
一昨日美術室で『また来てもいい?』という琉空の提案を了承したばかりだったから少し気がかりだった。
まあ美術室に私が1人でいることは当たり前に慣れているから特に寂しいとかはなかったんだけど。
本鈴が鳴って、席に着いた理緒が面白くなさそうにチッと舌打ちをした。
きっと何も言わない渚沙と、悪口が書いてあっても表情すら変えなかった私がムカついたんだろう。
こんくらいで傷ついていたら、このクラスにいれないって。


