次の日の朝、ざわついた教室に足を踏み入れると、渚沙と対峙している理緒の姿が目に飛び込んでくる。









その周りには、いつも以上に机が倒されていて、渚沙の筆箱の中身が散らばっていた。











「もういい加減限界!早く喋りなよ?喋れるでしょ?」









理緒が大声でキレる度に萎縮していく渚沙を見て、思わず唇を噛み締める。









…軽く震えているけど、決めたんだから勇気、出さなきゃ。









言え、言え。








「謝ることも出来なくてつっ立ってるだけって何様のつもり!?」










キンキンする声を出して怒鳴り散らす理緒に、そっと震える足を前に出して近づく。








「…夢空?」






彩が不思議そうに私の名前を呼んだけれど振り返らずに歩み続ける。









本当は怖くて怖くて、逃げ出してしまいたい。









でも、今までずっとそうやって逃げ続けたから、そうやって諦めてたから。









せめて今日くらいはちゃんと、向き合いたいんだ。









『なんなら、俺が夢空の居場所になる。』









失くなったって大丈夫。









昨日の琉空の言葉を思い出して、顔を上にあげた。








整っている理緒の顔がもうすぐそこにある。










「…やめて、もうそれ以上渚沙をいじめないで。」










必死の思いで出した声は想像以上に小さかった。








でも、クラスの空気が固まったってことは、きっと全員に聞こえたんだろう。










…言った、言ったよ。








「は、…な、に…」







「もうやめてって言ってんの、このままじゃダメだよ…、みんなだって、このままじゃダメって分かってるでしょ?」








私が反抗すると思わなかったのか、呆然としている理緒は上手く言葉を紡げないみたいで、近くにいる渚沙も目を丸くしていた。







その間に問いかけた私の言葉に、クラスのみんなも下を向く。









このままじゃいけないって誰だって分かってる。









ただ、それを口に出す勇気が、ないだけ。